わたしがまだ姫と呼ばれていたころ

イスを正面にくるっと向け直すと、先輩に横目でジロッと見られた。
でも、電話が次々かかってくるから、文句を言いたくても言えない状況。

よし、このまま十五分かかり続けてくれー。
いつもは途切れることを願っている姫だが、この日は先輩に怒られるのも、言い訳するのもめんどくさかったので、早く勤務終了時間が来るよう祈るのみだった。

上がる十分前に、姫と交代で次に台に就く人が来た。
電話はかかり続けた。やはり、夕方は忙しい。この調子、この調子。思わず笑みがこぼれる。

業者からの電話を、内線で担当部署につないだのがその日の最後の電話だったので、すんなり上がれた。ラッキー!
以前、上がる一分前にクレームの電話を取ってしまったことがある。あのときは長引いて最悪だった。早く切りたいこちらの心のうちを見透かされたかのように、ごねられて三十分もクドクドお説教が続いた。


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