わたしがまだ姫と呼ばれていたころ

新年会は居酒屋の個室であった。
お店に着く少し前にリナに電話しておいたので、二階の個室から入口まで降りてきてくれていた。

リナのあとについて、二階に上がる。

「こちら、姫ちゃんでーす。よろしくね」

リナが部屋に入るなり紹介してくれたので、「よろしくお願いしまーす」とだけ言う。

「姫、ここね。ジョンの隣」

案内された席に座ろうとしたら、ジョンがおどけた感じで話しかけてきた。

「ようこそ、姫さま。さぁ、どうぞどうぞ」

ジョンは目鼻立ちのくっきりした、彫の深い顔立ちだったが、聞こえてきたのは日本語だった。

「ジョンくんて、ハーフ?」

気になって、姫が尋ねる。

「いえいえ、れっきとした日本人でーす」


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