わたしがまだ姫と呼ばれていたころ
新年会が始まって、一時間くらい経っているようで、もうすでにみんな出来上がっている。
「姫、何飲む?」
リナが訊いてくれたので、ハイボールを頼んだ。
「姫、あと一時間くらいなの、ここのお店。ごめんね、急いで食べちゃって」
「うん、お腹空いてるからちょうどいいわ」
「ちょっと冷めちゃったのもあるけど、ごめんね」
「ううん、大丈夫」
リナがいろいろ世話を焼いてくれる。
そこへ、ハイボールが来た。
「じゃ、姫が来たことだし、カンパーイ!」
リナの掛け声で、みんな一斉に飲みかけのジョッキやグラスを、姫のグラスに元気よくぶつけてきた。
リナがみんなを簡単に紹介してくれた。
といっても、長テーブル二本に、十五人くらいの男女が向かい合って座っていて、とても全員の名前を覚えられそうにない。
それに、サルサのこともよく知らないし、お腹も空いていたことだし、これはもう食べるだけ食べたらさっさと帰ろう、と姫は内心思っていた。