わたしがまだ姫と呼ばれていたころ
「なんで?」
「だって、連絡すること、ないもん」
「姫になくても、俺にあるもん」
「なんで?」
「今度また会う約束するから」
「えー? もう会うこと、ないよ。今日はたまたま人数合わせで、ご飯食べに来ただけだもん」
「ねぇ、姫はサルサ、興味ないの?」
「踊れないから」
「興味、なくはない?」
「うーん。どうだろ」
「今度さ、教えてあげるよ」
「えー、いいよ」
「どーして?」
「だってー」
「サルサって、疑似恋愛とも言われてるんだ」
「疑似恋愛?」
「そう。男女でペアになって踊るんだけど、その相手と恋愛してるような気分になるから」