わたしがまだ姫と呼ばれていたころ

姫はぱっと振り返った。
ジョンが、そこに立っていた。笑っている。

「なんで?」

もう電話を通してではなく、直接話していた。

「姫が、もしコースター捨ててたりしたらいけないから」

「いつから?」

「居酒屋出てからずっと」

「つけてたの?」

「言葉で言うと、そういうことになるかな」

「やだ。先にひとりで帰ったんだと思ってた」

「いや、裏口にいた」

「みんなには?」

「先に帰るって」

「リナには?」

「正直に話した」

「リナが、ジョンはいいヤツだからって」

「親友が言うことなんだから、間違いないよな」

「そうね」


< 64 / 82 >

この作品をシェア

pagetop