わたしがまだ姫と呼ばれていたころ
姫はぱっと振り返った。
ジョンが、そこに立っていた。笑っている。
「なんで?」
もう電話を通してではなく、直接話していた。
「姫が、もしコースター捨ててたりしたらいけないから」
「いつから?」
「居酒屋出てからずっと」
「つけてたの?」
「言葉で言うと、そういうことになるかな」
「やだ。先にひとりで帰ったんだと思ってた」
「いや、裏口にいた」
「みんなには?」
「先に帰るって」
「リナには?」
「正直に話した」
「リナが、ジョンはいいヤツだからって」
「親友が言うことなんだから、間違いないよな」
「そうね」