マーメイド・ラブ
その後ろには、先生の後ろにいても顔がわかる程長身で、鼻筋の通った涼やかな目をした顔立ちの青年が立っていた。
彼は部屋に入ると、私を見てなぜか嬉しそうに笑った。
「良かったな。元気になって」
とても気さくな声だった。
彼はそう言うと、背中にまわしていた手を私に差し出した。
その手には可愛らしいブーケが握られている。
「はい。お見舞い」
そう言うと、彼は私の手を取り、強引にブーケを握らせた。
―っ!
ほんの一瞬だった。何かが私の頭の中で動いた。
でも、それはすぐに消えてしまい、体のどこかに何かもやもやとした感覚だけが残っている。
「どうした?」
彼は、突然動かなくなった私を心配してくれているようだった。
「あの、貴方は私の知っている人でしょうか?
私、どうやら記憶をなくしているみたいで。もし、知っている人だったら気を悪くしない で欲しいのですが。」
不安な気持ちで私は今の現状を伝えた。彼は、私のことを心配してくれている。私のために花束を持って来てくれている。それは知人だからなのかもしれない。けれど、私は彼のことを思い出すことができない。折角来てくれたこの人を少しでも不快な思いをさせないようにという思いを込めて言葉を選んだつもりだった。
「ああ、知っているよ。先生から聞いていたから。
それに、たとえ記憶があったとしても俺のことは知らないはずだよ」
「えっ?それじゃあ・・・」
だれ?・・・と聞こうとして私は言葉を飲み込んだ。
気のせいかもしれない。けれど、彼の目がなんだか寂しそうに見えてはっとしてしまったから・・・。
彼は部屋に入ると、私を見てなぜか嬉しそうに笑った。
「良かったな。元気になって」
とても気さくな声だった。
彼はそう言うと、背中にまわしていた手を私に差し出した。
その手には可愛らしいブーケが握られている。
「はい。お見舞い」
そう言うと、彼は私の手を取り、強引にブーケを握らせた。
―っ!
ほんの一瞬だった。何かが私の頭の中で動いた。
でも、それはすぐに消えてしまい、体のどこかに何かもやもやとした感覚だけが残っている。
「どうした?」
彼は、突然動かなくなった私を心配してくれているようだった。
「あの、貴方は私の知っている人でしょうか?
私、どうやら記憶をなくしているみたいで。もし、知っている人だったら気を悪くしない で欲しいのですが。」
不安な気持ちで私は今の現状を伝えた。彼は、私のことを心配してくれている。私のために花束を持って来てくれている。それは知人だからなのかもしれない。けれど、私は彼のことを思い出すことができない。折角来てくれたこの人を少しでも不快な思いをさせないようにという思いを込めて言葉を選んだつもりだった。
「ああ、知っているよ。先生から聞いていたから。
それに、たとえ記憶があったとしても俺のことは知らないはずだよ」
「えっ?それじゃあ・・・」
だれ?・・・と聞こうとして私は言葉を飲み込んだ。
気のせいかもしれない。けれど、彼の目がなんだか寂しそうに見えてはっとしてしまったから・・・。