あなたの運命の人に逢わせてあげます

ある日の放課後、教室の前に置かれていたオルガンをおれは一人で弾いていた。

弾く、と言っても習ったことがないので右手だけで、しかも当時アラサーだった音楽の先生が「ウルトラマンの中ではこの歌が一番好きなの」と言っておれたちに歌わせていた「帰ってきたウルトラマン」だけだ。

しかし、それも完璧ではなく、いつも途中でメロディーがわからなくなっていた。

この日も同じところで止まった。

そこへ彼女がふらっと入ってきて、続きを弾きだした。

オルガンを弾く彼女の指ではなく、少し得意げな笑みを浮かべた横顔を、おれはじっと見つめた。

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