あなたの運命の人に逢わせてあげます

彼女が「帰ってきたウルトラマン」を弾き終わった直後、おれは彼女の頬に軽く、自分のくちびるをくっつけた。

彼女がびくっとしておれの方を見た。

目が怒っている。

なのにおれは、反射的に彼女を引き寄せ、抱きしめてしまった。

彼女は必死でもがいて、おれの腕の中から脱出しようと試みた。

だが、おれは痩せてはいるが男子の中では背が高く、女子の中でも小さな彼女が振り払えるような相手ではない。

そのうちに観念したのか、おとなしくなった。

女っていうのは、本当に力のない生き物なんだな、としみじみ思った。

おれは彼女を抱きしめた手に、さらに力を込めた。

そのとき、生まれて初めて、自分の身体(からだ)のあの部分が固くなるのを感じた。

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