あなたの運命の人に逢わせてあげます

修学旅行の夜、児童会長のおれは行く先々で代表として人前で挨拶をし、気疲れしてやたら眠たかった。

だから、おれだけはとっとと布団をかぶって熟睡する体勢に入っていた。

すると、クラスメイトたちが「好きな女の子」の名前を告白しだした。

彼女の名前もちらほら「発表」され、胸がムカムカしてきた。

友人のひとりが「次はおまえの番だぞ」と言って布団をめくった。

おれは、当然、彼女の名前を告げた。

そして、

「……大人になったら、結婚するつもりだから」

ときっぱり言い切り、布団をすっぽりかぶった。

クラスメイトたちから歓声が上がる。

おれは布団を(めく)って顔を出し、

「おまえら、あいつには言うなよ。大人になったら、おれが自分でちゃんと言うから」

そうつけ加えて、また布団をすっぽりかぶった。

おれの彼女への想いは、ほかのヤツらとは違うんだということを見せつけてやりたかった。

そして、今度こそ熟睡した。

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