あなたの運命の人に逢わせてあげます

エスカレーターに乗った、中学生くらいのカップルが見えた。

手をつなぎ、ぴったりと身を寄せて、くすくす笑いながら話をしている。

もちろん、なにをしゃべっているのかはゴンドラの中のこちらからは一切わからないが、最近は中坊のガキでも平気で人前でいちゃつきやがる。

下りてくる彼らのエスカレーターと上がっていくおれたちのゴンドラがすれ違う。

彼らの顔が目の前になった。

おれの表情が凍った。

そこに、あの頃の、おれと美咲の顔があった。

おれは確かめたくて、もう一度彼らを見た。

しかし、彼らの乗ったエスカレーターはもう下へ降りていき、後ろ姿しか見えなかった。

おれは頭を振った。

……バカバカしい。目の錯覚だ。

美咲が隣にいるからそう見えたのだ、と思った。

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