あなたの運命の人に逢わせてあげます

「……懐かしい匂いがする」

団子頭に綺麗に結い上げた美咲のうなじへ頬を寄せたおれがつぶやいた。

「……子どもの頃のあたしの匂い、覚えてるの?すごい記憶力だね」

美咲が無邪気に笑った。

その声は、重ねたおれの身体(からだ)の中から響くように聞こえてきた。

「いや……違う……そういうんじゃなくて……懐かしい香りなんだ」

おれはその香りを胸いっぱいに感じながら言った。

「ああ、わかった……『椿油』だ」

美咲が腑に落ちたように言った。

「髪をアップするのに、天然の椿油が入ったヘアワックスを使っているから」


ゴンドラが頂点に達した。

< 69 / 126 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop