桜が咲く頃、君の隣で。
「クラスの印象はどうか聞いたんだ」

「それで?」

「みんな優しそうで安心したって」


まぁ、そう答えるしかないよな。そのわりには俺に冷たい気がするが……。



「でもさ、俺は安心したよ」

「は? なにがだよ」

「彰にもやっと好きな人が出来そうで」

「なっ、別にそんなんじゃねーし」


大和は食べ終わったパンの袋を丸めながら俺を見て薄笑いを浮かべている。


「マジでさ、少し心配だったんだよ。一応友達だし」

「心配って、俺のことがか?」


頷いた大和がパンの袋を俺の後方めがけて放り投げると、袋は見事にゴミ箱の中に吸い込まれた。

こういうことを毎回軽々とやってのけてしまうところが、イケメンの持つ力みたいなものなのだろうか。

俺が投げたら確実に外すだろうな。そして結局自分で取りに行って捨てるという情けないことになるのは目に見えている。
だから俺は決して投げずにゴミは歩いてゴミ箱に捨てる。



「毎日楽しそうにはしてるけどさ、彰が夢中になってなにかについて語るとか、好きな女の話するとか、そういう姿を見せたことないだろ?」


大和の言う通りだ。好きな女はいないからしないだけだが、学校の行事やイベントごとだけでなく、学校生活全てにおいてなにかに本気で夢中になったことは一度もない。


勿論体育祭や球技大会で勝った時には喜ぶし、クラスメイトとハイタッチだってする。
ただ、そこまで熱くなれないだけだ。

決して余韻に浸ることはなく、次の瞬間には疲れたなーという気持ちしか残らなくて、体育祭の後に打ち上げだなんだと騒いでいるクラスメイトのノリには付いていけない。

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