桜が咲く頃、君の隣で。
「でも気になるんだろ?」

「さぁな……」


大和の質問から逃れるように、窓の外に視線を移した。

目に映るのは綺麗な青空ではなく、薄汚れた壁。



「やりたいこととか将来の夢とかなんもないしなんも考えてないって前に言ってたけどさ、ほんのちょっとのキッカケで、これまで自分が見てきた世界が大きく変わることもあるんだぜ」


大和の言っていることは、俺にはよく分からない。

逆に、プロのサッカー選手になりたいという夢のある大和には、俺の気持ちは分からないだろう。
適当に楽しく生きているだけの、なにもない空っぽの俺の気持ちは。



「ふーん。まぁよく分かんねぇけど、好きとかじゃないから勝手に妄想すんなよな」

「じゃー仲良くなりたくないのか? 俺はなりたいけどなー。転校生がどんな子か気になるし」


窓の外にあった視線を大和に向けた。

大和と雪下さんが並んだら、とんでもなく絵になるなと一瞬思ってしまった。
それと同時に、少しだけ嫌な気持ちになった。



「仲良くっつーか……嫌われたくはないかもな……」


思わずぽろっと呟くと、大和は身を乗り出し、俺の机の上に両手を置いて口角を上げた。


「なっ、なんだよ」

「人からどう思われてるかとかそういうの全然気にしないお前が、嫌われたくないって今言ったよな?」

「今のはそういう意味じゃなくて、だって、そりゃそうだろ。嫌われるのと嫌われないのとじゃ……」


なんだか必死に言い訳をしているようにしか思えなくて、俺は言葉を止めた。

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