桜が咲く頃、君の隣で。
*
その日から、俺は今まで以上に雪下さんに話しかけた。
それでもやっぱり雪下さんの態度は今までとあまり変わらず、俺にだけ冷たい。
そんな中でも俺はくじけなかった。心も折れなかった。諦めることも考えなかった。
ただひたすら一方的に話しかける毎日を続けていて、気づけば一月が終ろうとしている。
会話のキャッチボールが出来ないことにも慣れてきたことだし、思い切ってどこかに誘ってみようか。
自分の部屋のベッドに仰向けになりながら考えていると、スマホが鳴った。メールの着信音だ。普段あまりメールはしないから珍しい。
どうせ迷惑メールかなんかだろう。そう思いながらメールを見ると、差出人の欄にはメールアドレスが表示されていた。
つまり電話帳に登録されていないアドレスということで、やっぱり迷惑メールだ。
スクロールして本文を見ると、こう書かれていた。
〝球技大会、絶対バスケに出てほしい。〟
「は?」
思わず声が出てしまった。
球技大会? 少し考えた後、机の横に貼られている学校の年間行事の紙に目を向けると、二月の予定には球技大会と書かれていた。
「球技大会ってこれのことか?」
独り言を呟きながらもう一度メールを読む。
迷惑メールだったら絶対に返信しないほうがいい。でも球技大会って、学校のことだよな? 文面からして迷惑メールって感じでもないし……。
悩んだ挙句、俺は返信をした。
〝誰?〟
当然の疑問だった。けれどそんな俺の疑問に対して、結局返信が来ることはなかった。