桜が咲く頃、君の隣で。



翌日学校に行くと、朝のホームルームで担任がこう言い出した。

「球技大会に出る種目を決めるぞ」


昨日のメールはやはりクラスの誰かなのだろうか。今日球技大会のことを決めるというのを知っていたのか?
俺にバスケに出てほしいというのはなぜなのだろう。

俺のことを密かに想ってくれている女子が、俺がバスケをやるところを見たくて……なんてことはあるはずないか。だったらなんだ?


机に肘を付き首を傾げながら考えていると、「出たい種目に手挙げろよー。じゃー男子からな」担任がそう言って黒板にバスケットボールとサッカーの文字を書いた。



「バスケットボールに出たい人」


よく分からないまま、俺は手を挙げた。


本当はサッカーに出るつもりだった。
なぜならうちにはサッカー部のエースである大和がいるからだ。

つまり、俺はなにもしなくても邪魔さえしなければいいし楽だから。

でも昨日のメールがずっとチラついていて、ついバスケという言葉に反応して手を挙げてしまった。


バスケは苦手だし五人しかコートに出ないから、ミスしたら目立つな。

かっこ悪いところを雪下さんに見られたくないが、まぁ……心配しなくても俺のことは見ないだろう。



「お前バスケに出るの? 彰のことだから、人数多いサッカーでいいやって言うかと思ったけど」


くるりと振り返った大和。まさにその通りなのだが、メールのことを言うと誰かが俺を好きなんだとか変に誇張されそうだから止めておこう。


「まー、なんとなくな」


結局出場種目はきっちり人数が分かれたお陰で男子も女子もすんなりと決まった。

雪下さんは手を挙げていなかったが、見学ということだろう。


机の上に鞄を置き、その陰に隠すようにして昨日のメールをもう一度確認した。

これは一体なんだったのだろうか……。





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