桜が咲く頃、君の隣で。
その日の昼休み、俺は自分の机で弁当を食べていた。

いつもは大和も自分の席で弁当かパンを食べているのだが、先輩に呼ばれたとかなんとか言って教室を出たきり、戻って来ない。

あと十分で昼休みが終わってしまうけれど、あいつは食べたんだろうか。


話す相手がいないからか、いつもより早く弁当を食べ終えた俺は、廊下に出た。

別に心配しているわけではないが、もしなにも食べていなくて授業中に大和のお腹がグーグー鳴り出したら気になる。ただそれだけだ。



先輩というのはサッカー部の先輩か? 渡り廊下を通って三年の廊下を歩いてみたけれど、大和は見当たらなかった。

となるとあとは、部室?


部活のやっていない俺が部室に行くということはまずない。

そもそも部室は体育館の裏側にあって校舎からは少し離れた所にあるため、用がない限り放課後以外ほとんど人は通らない。


上履きのまま校舎を出て体育館に行くと、その脇にある細い道を通った。

葉を落とした木々を横目に歩き、体育館に沿って角を左に曲がると部室がある。

けれど俺は、そこで立ち止まった。

声が聞えたからだ。壁に体を付けて耳を澄ます。




「なめてんのか!」


突然聞こえた怒鳴り声に驚いた。大和に向けた言葉なのだろうが、なにか大和が先輩にキレられるようなことをしたのか?

高校からの付き合いだけれど、大和が誰かに憎まれたり嫌われたりといった話は一切聞いたことがない。

寧ろ男女問わずに慕われている方だと思うが……。



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