桜が咲く頃、君の隣で。

君の涙




テスト前のこの日、大和に誘われて俺は図書館に来ていた。

駅の近くに図書館があることは知っていたが、実際行ったことは一度もなく、図書館で勉強自体一度もしたことがない。


南口から駅の中を通り反対側の北口へ出ると、そこには大きな公園がある。

緑が生い茂る公園の真ん中には大きな池があり、池の周囲をランニングしている人もチラホラいて、子供達が遊ぶアスレチックのような所や春になると桜祭りが開催される広場、ボールを使って遊べるグラウンドまである。

ここで行われる桜祭りは結構有名なのだが、俺は一度も行ったことがない。公園に入るのも初めてだ。


公園のすぐ横に建っている茶色い煉瓦造りの建物が図書館。

見上げると、建物上部の真ん中にある大きな時計盤がちょうど十五時になったタイミングで開き、穏やかなメロディーと共に金色のなにかがクルクルと回り始めた。
ここからではなにが回っているのかはよく見えない。



中に入ると右側には螺旋階段、左側に本の貸し出しなどをする受付があった。

大和の後に着いて螺旋階段を上り、両側にずらりと並んだ本棚の間を通って奥に行くと、横長のテーブルが幾つも並んでいるスペースがあり、座っている人が何人もいる。

両サイドの壁には窓もある。
段々と日が落ちてくるこの時間、左側の窓のカーテンは全て閉められていた。


「ここでいっか」

大和がそう言うと、俺達は一番奥のテーブルの通路に近い場所に向かい合う形で座った。

話し声はほとんど聞こえない代わりに、本を捲る音があちらこちらから聞こえてくる。
この静けさがなんとも言えない緊張感を醸し出す。

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