桜が咲く頃、君の隣で。
出来るだけ音を立てないようにと、鞄からゆっくりとノートと教科書を取り出す。


「別にそんなに気にしなくても大丈夫だぞ」

机にノートを置き、ペンケースを開けながら大和が言った。


「んなこと言ったって、音立てたら一斉にこっち向いて『シー!』とか言われちゃうんだろ?」

俺にとっては図書館で勉強すると言ったら、そんなイメージだ。


「いや、ドラマじゃないんだから言わないと思うけど。他の人達も小声で喋りながら勉強してたりするし、大きな声とか音を立てなければずっと無言でいなくても平気だから」


「そっか。つーか、大和はよくここに来るのか?」

それでも周りが気になって極力小声で話そうとしてしまうのは、図書館という空間がそうさせるのかもしれない。


「いや、実はこの図書館には一年の時に一回来たきりで、いつもは地元の図書館に行ってるんだ。今日は理紗に言われたから」

「理紗に?」

「彰が勉強しないから図書館にでも連れてってやれって。俺と彰だと地元違うし、ここの図書館の方が行きやすいだろ?」

「まーそうだけど、また理紗のお節介が出たな」

「心配してんだろ、幼馴染みなんだし。でも図書館は集中できるからいいと思うぞ」

「ふーん」


図書館で勉強なんて考えたこともなかったけれど、頭の良い大和が言うのだから間違いないのだろう。

実際こうして座ってみると、将来のことをやたらと煩く言う親を気にしながら家で勉強するよりも、断然はかどるような気がする。

今度からは俺もテスト前は図書館で勉強するかな。

< 42 / 50 >

この作品をシェア

pagetop