不機嫌なジェミニ
午後はデザイナーはワゴン車に乗って郊外にあるアクエリアスのジュエリー工房に向かった。

私はボンヤリ、窓の外を見る。
セイジさんに悪いことをしちゃったな
私を心配してくれただけなのに…

45分ほどでジュエリー工房に着く。

高価な宝石類を扱う場所なので、外観からはわからないように
3階建のコンクリートの四角い住居のような外観をしているけど、


中では50名ほどの職人さんがそれぞれ、技量によって振り分けられた作業を黙々と行なっている。
地下には加工のための炉や、薬品を使用するため、工場の様な様子も見受けられた。


ここの職人の取りまとめはジンさん専属のジュエリー職人さんの由良(ゆら)さんで、
私達を案内してくれ、
個性的なデザインをするデザイナーの作品を作るのが楽しみだ。
と言ってくれ、今手がけているオーダーメイドのブローチを見せてくれた。

美しいブローチには大ぶりな宝石が留め付けてあって
いったいいくらするのかっていうのは考えないことにしておく。

私達はそれぞれ、挨拶をし、
「藤野 トウコです」と言うと、

目を細め、やっぱりジンの作った犬に似ているな。と笑いかける。

ジンさんの作った犬に似てるんじゃなくて、逆だから…と思いながら頭を下げた。

「やっぱり、トウコちゃんのリュックについてるのジンさんのデザインなんだ」と吉岡さんが言い、

「ジンのハンドメイドだよ。」と由良さんが笑うと、

ええっ!?とみんなは驚き、

「ジンさんジュエリーも作るんですね。」と結城さんが言って、
「だから、石のカットでどんな表情になるかってよく知ってるんだなあ」と武田さんが感心した声を出した。

「ああ、ヨーロッパにいる時、ジュエリー工房を転々としていたみたいだしね…」
と由良さんがおしえてくれる。

…ジンさんは苦しい時、デザインができなくなっても、ジュエリーから離れなかったんだ。と私はそう思って
ジンさんのジュエリーに対する気持ちがとても嬉しかった。




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