不機嫌なジェミニ
「…ここに来る前、前の『マッキンレー』って喫茶店に行った?」

と成宮さんが私の顔を真面目な顔で覗く。


そう…
確か、山の名前の喫茶店だった…

「…はい。…え?そこでイタズラされたんでしょうか…」とハッとする。

あの時寝ちゃって…えーと…

「これはバツがついてない。」と覗き込んでいた王子が笑って1枚のデザイン画を指差す。


「…やれやれ。君が知らない間に、デザイン画に印が付いてたって事だな。」
と成宮さんがバツの付いていないたった1枚のデザイン画を見つめ、

「セイジ、仁(じん)を呼んで。」と不機嫌な顔をした。

「ジン?」と私がポカンとすると、

「成宮 仁を知らない?」と成宮 仁がくすんと笑う

私があっけにとられて目の前に座った成宮 仁を指差すと、

「あんな男と一緒にされると、困るな。
僕は双子の兄の成宮 蓮(なりみや れん)だよ。」と微笑んだ。


…え?!双子?

「…ジェミニ」と思わず声を出すと、

「そういう事。
双子座生まれの双子のジュエリー会社。
デザインは仁。経営は僕。知らなかった?
結構業界じゃ有名だけど…学生さんじゃ知らないか…」とクスクス楽しそうに笑った。



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