不機嫌なジェミニ
9月。

来月からの『Ciao!』のブランドの発表に合わせて、私達デザイナーの作品が職人さんの手によって形になって出来上がっている。

いままで細かい修正をおこないながら、
担当になった職人さんと打ち合わせを重ねてきていたのだ。

私の担当さんは30代の女性の今井さんだ。

サンプルを、感慨深く見つめる。
とても愛おしく感じる。

ジンさんが私の頭をポンポンと撫でて

「どの作品も魅力的だ。
沢山の人に手にとってもらいたいな」

と微笑んで、みんなを見回し、広報担当との打ち合わせに出かけて行った。

私達はそれぞれのサンプルを見せ合って微笑み合い、とても幸せな気分でその日を過ごした。


私は家に帰って、食事の用意をする。
今日はジンさんの好きな生姜焼きとポテトサラダだ。
後は常備菜のレンコンのキンピラと御味噌汁。

平日は簡単な物を作っているけど、ジンさんは美味しいとどんなものでも食べてくれる。

今日は会議で遅くなると連絡が入っていたので、食事を済ませ、お風呂に入って、ベッドに転がった。

最近の私は、ジンさんと行った旅行先で見た、天国の階段の風景が忘れられずに、
それをデザインするなら…と考え、
何枚もスケッチを書いている。

ハトコのペンケースから芯の柔らかい鉛筆を取り出し、
考えながらスケッチをする。

光の柱を表現するなら
どんなものがいいだろう。
クリスタルだろうか…







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