不機嫌なジェミニ
「トウコちゃん、おめでとう。
副賞って知ってた?」

とレンさんが入り口の近くで微笑む。

…副賞?

「新人賞の次点には賞金は無いんだけど…
新人賞の人と2人で
イタリアのArtemis(アルテミス)に2年留学出来ることになってる。」

アルテミスは世界有数のジュエリーブランドだ。
…そこに留学出来るの?

「…断ることも出来るけど…
社としては応援するつもり。
お給料はちゃんと出すよ。
向こうで、アルテミスの日本人スタッフがサポートしてくれるようになってるし…」

イタリア…?
…2年間…

「えー、イタリアかいいなあー」

と結城さんが楽しそうな声を出す。

「でも、旅行じゃなくて…留学だよね。」

セイジさんが少し心配そうな声を出す。

「…」

「4月からだよ。よく考えれば良い。
じゃ、とりあえず、マッキンレーで飯だな。
みんな好きなものを頼め。」と私の顔を見つめてから、ジンさんはゆっくり歩き出す。

「みんな、片付け、急げ!!」とセイジさんが笑う。

「マッキンレーじゃ、ランチしかないじゃん!」と蘭子さんが文句を言いながらジンさんに付いていく。

私も急いで、描きかけのデッサンを片付けた。



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