不機嫌なジェミニ
「えっ?!」

「もう、トウコのコンテストが終わってからすげー忙しかった。
レンにしばらく日本にいなくて良いって了解をとって、
俺はローマに住む準備をした。
親父に一応、許可をもらいに行ったら、
結婚してからなら良い。って許可が出たよ。
だから、すぐに籍を入れよう。」

私はポカンと口を開いてジンさんを見る。

「大体、トウコは英語も怪しいのに、
イタリアでひとりで暮らせるわけないだろう?
病気になったりしたらどうやって病院に行って説明すんだよ。
世話役がいたって休みの日まで、面倒見てくれねーだろ。
その点俺は英語もできるし、イタリア語もドイツ語も日常会話ぐらいなら問題ないよ。
おまけに、あの男。絶対あぶねーし。
仕事以外で会わせるわけないだろ!」

「ずっと…忙しかったのって…
イタリアに住む準備?」

「そうだよ。
おまえはなかなか強情で
『一緒に行って』って泣き付いて来ないし…
俺がトウコをひとりでイタリアなんかに行かせるわけないだろう。
俺が我慢できない。
絶対一緒に行く。」

と私の身体を固く抱きしめる。
涙が溢れて止まらない。

一緒に居られるの…

ずっと?


「…ジンさん、一緒にイタリアに行ってください」

と私が泣きながら言うと、

「…やっと言ったな。
当たり前だ。
離れるわけないだろ」

とジンさんは深く唇を重ね貪るようにくちづけを繰り返して、
そのまま私を抱き上げ、ベッドに運んだ。



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