不機嫌なジェミニ
「おはようございます。」と『D』の部屋に出勤すると、ジンさんはいなくて、
昨日とは違うタイプの派手なシャツを着たセイジさんがパソコンに向かっていた。

私はすぐに昨日の続き、あと3日で4枚のデザイン画を描かなければならない。
に取り掛かった。

入り口近くのドーナツのテーブルの一画に写真集や、
撮りためていた写真や、画集などを黒いリュックから出して広げると、

「トウコちゃんの荷物が大きいのってそういうのが入ってるんだ。」とセイジさんが笑う。

私は昔から荷物が多くて、重たい本や、スケッチブックや色鉛筆なんかが沢山詰まっている。

今日はセイジさんに好きなカッコで出勤していいよ。
デザイナーは決まった服はないんだ。
と言われたので、
ゆったりした水色とグリーンの中間の色の袖の膨らんだシャツと、
黒のこれもゆったりしたオールインワンのパンツに昨日の黒いプレーンなバレーシューズを選んだ。

白い上品な襟のないビジューの付いたブラウスと黒のジャケット、
黒いパンツと踵の太いヒールも持ってきてロッカーに入れた。
もし、社外の人に会うときに役に立つだろうし、

いざという時の着替えだ。一応、下着や、お泊まりセットも用意した。

仕事に夢中になりすぎて、帰れなかった時の保険って感じだ。

「昔っから荷物が多いんです。予備の予備とか用意するタイプで…」と苦笑いをすると、

「画集とかは置いていけば…」

「ありがとうございます。」と言っておくけど、

きっとまた、持ち帰ってしまうのかもしれない。

家で画集や、写真集を必ず出して眺めるわけじゃないのに、

いつでも持っていて取り出す事ができる。っていうのが重要なんだ。


「絆創膏、とか、裁縫セットとか持っているタイプ?」

「胃薬や、スマホの充電器もお任せください。」というと、

「必要になったらよろしく。」と少し呆れた声を出して、セイジさんは仕事に戻った。









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