不機嫌なジェミニ
翌日土曜日。

「弁当美味かった。強いて言えばもう少し、量が欲しかったな。」
私の顔を見てジンさんは言ったけど、

「なんで、休日出勤してるんだ?おまえの勤務は平日だけだろう?」と睨まれる。


「だって…家じゃ、妹もいるし、家事もしなくっちゃならないし…
デザインの事が考えられなくて…」と言い訳すると、

「明日は休みにしろよ。今日は休日出勤にしておいてやる。」とため息をついて部屋を出て行った。

えっと…それってお給料が出ちゃう?
場所だけ借りたかったんだけど…

誰もいなくてシンとした部屋。
やっぱり、集中できるかも…


私は残った2枚のデザイン画を『ハトこ』の付いたペンケースを取り出し、描き始める。
昨日寝る前や、ここにくるまでにいくつか思いついたのがある。

今の私の頭の中は
ジンさんに出された課題の事でいっぱいだ。

昨日、香澄の話も上の空で聞いていて、何にも聞いてないって怒られた。
バレンタインの手作りチョコはどうするかって話で、
毎年、一緒に友チョコを作って配っているので、いつ作るかって言う話だったと思う。

とボンヤリ思いながら、描いているデザインに集中する。

周りの音は聞こえなくなり、自分のイメージを形にしていく。

私はこういう時間が好きだと思う。


もし、私のデザインを身につける人がいてくれたら…

幸せな気持ちで選んでくれたら…

そう思うとワクワクが止まらない。







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