不機嫌なジェミニ
「『ハトこ』と交換。」とジンさんが私に手を出すので、

「は、『ハトこ』は渡せません!」とペンケースを握りしめると、

「なんだよ。この『犬のトウコ』が気に入らないのか?」と機嫌の悪い顔をするので、

「す、すごく、気に入っています。で、でも、『ハトこ』と交換できない。」と言うと、

「めんどくセーな。」とくすんと笑い。

私の黒いリュックを持ち上げ、リュックの前ポケットの所に

ブツッと金色に光る犬のピンバッジを付けた。

「えっ?」

「やる。気に入ったのならいいんだ」と言ってジンさんは自分のデスクに戻っていく。


「高級なピンバッジ。だよ。
石はついてなくても、ジンさんのハンドメイドだし…」とセイジさんがニヤニヤする。

…売り物なら絶対高額!
こんな普通のバッグに付けていいんだろうか?

でも、ジンさんが付けたバッジは私が外すのがはばかられる。

いや、もう、どうしたらいいの

と頭を抱えると、

「こら、おまえら、仕事しろ!」
と言って、ジンさんは難しい顔でパソコンに向き合い、私達は慌てて仕事にもどった。
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