不機嫌なジェミニ
成宮 仁を1度だけ見たことがある。

去年の専門学校の入学式後の来賓の挨拶が成宮仁だったのだ。
(ジュエリー界の有名人が学校に来るって騒ぎになってみんなで見に行った。)

なんでも校長とお知り合いということで、
賞を受賞した後、忙しい合間を縫って短い挨拶をしただけだったけれど、
すごくイイオトコだったのは覚えている。
日本人離れした彫りの深いくっきりした顔立ち。
スラリと背が高く、高級そうなスーツを着こなし、黒いサラリとした長めの前髪を無造作にかきあげ、
意志の強そうな強い光を放つ切れ長の瞳がとても印象的だった。
低い通る声で最後に
「美しいモノに感動する心を育てろ」
と言って壇上を降りて校長と言葉を交わし、そのままいなくなった。

成宮 仁は自然にあるものをモチーフにしてデザインするのが特徴で、
グランプリを取った『雫(しずく)』は
様々に美しくカットされた12個の雫型のダイヤモンドと
ホワイトゴールドの繊細な木の枝のような模様を組み合わせたブローチだった。

冬を思わせる美しい装飾品だったのを食い入るように見た。

天才。

なのかもしれない。

贅沢なジュエリーはいくつも見たけれど、

心が震えるジュエリーに出会ったのは初めてだった。



彼がデザインするジュエリーは特別。



一般のジュエリーデザイナーとは全く違う。

身につける人を選ぶジュエリーだ。
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