不機嫌なジェミニ
「ジンさん、ごちそうさまでした!身体がホカホカにあったまりました。」
とまた、ジンさんの車に乗せられ、シートに落ち着くと、

「トウコ…少し、飲まないか?」とジンさんが私の瞳を覗く。

…あんまり覗き込まれると、さっきから心臓がうるさいんですが…
プライベートでイケメンの隣にいた経験がないので…と心の中で言いながら、

「私は良いですけど、ジンさんは車では?」と聞くと、

「…そうだった…慌てて来たから忘れてたな。
まあ、1度家に帰ってから近所で飲んでもいいか…
トウコはタクシーで送れば良いし…」と言うので、

「良いですよ。
今日は飲みたい気分なんですね。付き合います。
スーツだし、なんかありましたか?」と明るく答えると、

「別にいつも通りだよ。
『アクエリアス』の会議に出て、打ち合わせをしたきただけ。」
とふっと笑ったジンさんがゆっくりと車を発進させる。

「そうですか?
面倒ごとが起きてなくて良かったです。
それでなくてもジンさんって忙しいのに…」と顔をしかめると、

「そうだな。厄介なペットも飼い始めちゃったし…」

「え!ペットですか?いいなあ、実家では犬を飼ってるんですけど…」といっている途中で

「電話には出ないし、公園で凍えてるし…」とジンさんが前を向いたままクスクス笑うので、

「…」

それって…私?とふと、気づいて、黙ると、ジンさんはくしゃくしゃと私の髪をかき回し、

「トウコ、メシの後は散歩だろ。」と笑った声を出す。


…ペット…

ご飯に散歩。
気が向くとワシャワシャ撫でたりもする。

まあ、そうね。


と少し納得し、車の窓から見える灯りをぼんやり見ていた。

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