不機嫌なジェミニ
「…私が…好きですか?」

「周りに呆れられるくらい態度に出てるのに、トウコはやっぱり鈍いんだな。
俺はトウコが好きだよ。
初めてマッキンレーで無防備な寝顔を見た時から…
トウコのデザインは明るくて可愛らしい、前向きなトウコの内面を表している。ってそう思う。
随分年下なのに一緒にいるだけで、くつろげてホッとする。
食事を美味しそうに食べる顔も、デザイン夢中になってる顔も、悩んで、考え込む顔も、
俺の隣で眠る穏やかな寝顔も全部俺のモノにしたいってどんどん思うようになった。
好きだよ。トウコ。
俺のオンナになって欲しい。
部下じゃなく、
デザイナーとしての後輩じゃなく、
いくら愛してもいいただのオンナになって欲しい。
俺のそばにいて欲しい。
…まだ言葉が足りない?」と私の顔を楽しそうに見つめる。

私はジンさんの言葉の途中でもう、涙が流れ出す。
なんでこんなに嬉しいんだろう?

私はジンさんに恋をしているただのオンナになりたい。
年が離れていても…上司だと自分に言い聞かせていても…
大人のジンさんに私が不釣り合いだと分かっていても…

ジンさんが好き。

仕事をする真面目な眼差しも、
私をからかう時に見せる柔らかい笑顔も、
どんなジンさんも好きだと思う。

「好きです。ジンさん。
…私をジンさんの女にしてください」
と泣きながら言うと
私の涙を指ですくってから、固く抱きしめて、甘くくちづけし、

「じゃ、とりあえず、シャワーでも浴びて仲良くベッドに入ろうか。」と嬉しそうに私の顔を覗く。

「て、展開が早くないですか?
わ、私、この間のパジャマとか持ってこなかったし…」

「そんなことだろうと思って、また、用意してあるよ」

と満面の笑みで耳元で囁き私をソファーから抱き上げた。

…ちょっとジンさん…

今日は襲わないって約束してくれそうにないのかな…


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