不機嫌なジェミニ
シャワーを浴びて用意されていたバスローブを羽織って、

洗面台の前に置かれた椅子に座ってため息をつくと、

ドアがバタンと開いて髪を濡らし、上半身裸で部屋着を履いたジンさんが現れた。

驚いて声が出ない私に

「どうした?髪を乾かしてやろうと思ったんだけど…」

「か、鍵かかって…どこでシャワー…」

「家主に開けられない鍵はないって思うけど…
今さっきバスローブ用意したのも俺だし…シャワールームはひとつじゃないし…」
と楽しそうに笑って洗面台の引き出しからドライヤーを取り出し、
私の髪を乾かし始めた。

私はポカンとジンさんを見つめると、

「間抜けな顔のトウコも好きだよ。」と私の髪をワシャワシャとかき混ぜる。

「…ジンさんのイジワル」と私が俯くと、

「でも、トウコは俺が好きなんだよね」とくすんと笑って私の髪を柔らかく撫でた。


ま、そうだけどー。

なんだか納得できない。

と私は口を尖らせた。


「はい、おしまい」とジンさんはポンと頭を撫で、私を抱き上げベッドに運ぶ。

「ジンさんも髪を乾かさないと…」と言ったけど、

「もう、焦らすなよ」と真面目な顔でベッドの上に私を組み伏せ、首筋に唇を這わせる。

私は顔を赤くしながら

「はっ、初めてなので…ジンさんは楽しくないかもって…」

「緊張しているのはわかってるから…もう、黙って俺に抱かれなさい。」

とジンさんは優しい瞳で私を見つめる。
しばらく見つめ合うと安心して私はゆっくり目を閉じ、ジンさんの優しい動きに身を任せた。

「トウコ、蝶々のネックレス。似合うな」とジンさんが囁く。

「あの日から…外してません」と目を閉じたままで言うと、

「ずっと外すなよ」とため息のようなこえをだして、深くくちづけする。




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