不機嫌なジェミニ
「成宮 仁って35歳でしょう。
妻子持ちじゃないの?
あんなにカッコ良いんだから…他にも女がいるでしょ
トーコちゃん、大丈夫?」と笑って私の顔を覗く。

「つ、妻はいないって思うけど…」

そういえば他のオンナのヒトの話を聞くのを忘れていた。
と思い出す。

「え?冗談だったんだけど…他に女がいるの?」と顔をしかめて、

「いや、えーと、会社の人には『彼女さん達』がいるって聞いてたけど…
ジンさんの秘書の妹さんは彼女はいないって…そう言って…」と思わず正直に答えてしまい、

「で?」

「えっと…まだ聞いてない…」

「はあ?トーコちゃんって馬鹿なの?聞いてから、SEXすれば?」

「あ?え?…どうして…」

「胸元にキスマーク付いてるし、
あんな女に慣れてそうな男がいつまでも手を出さないなんて思えない」

…ごもっともです。

「お子様なトーコちゃんが他に女がいる男と割り切って付き合えるとは思えない!」
と香澄が怒った声を出す。

「ま、待ってよ。
ジンさんに他に付き合っている人がいるかわからないでしょう。」

「…私が聞こうか?スマホの番号知ってるし…」

とスマホを出すので、待って!と香澄の手を掴み、

「自分で聞けるし!
それに、…それに…それでも良いって思ったの!
他に付き合ってる人がいるかもしれないって知ってても…
わかってて抱かれたの!
ジンさんに好きだって言われて嬉しかったの。
そばにいてほしいって言われて嬉しかったの。
…好きなの。
…だから…放っておいて。」と叫ぶように言うと、

「…本当に好きなんだね。
トウコちゃんがそんな風に言うなんて初めてじゃない?
…暫く放っておいてあげる。」と香澄はため息をつき、私の頭をポンと叩く。

「…お風呂に入ってくる。」と私が言うと、

「長風呂禁止。お風呂の中で泣かないでよ。」と香澄は自分の部屋に入っていった。






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