不機嫌なジェミニ
「ねえねえ、藤野さん、あの2人ってすごくかっこいいですよね。」
と私の話を聞いていた販売の女の子が私たちの中に入ってきて、私の顔を覗く。

「そ…そうですね」

「彼女っているのかなあ。販売ってなかなか上のオフィスに行かないから、
目の前の『マッキンレー』って喫茶店で社長や、安住さんを見るんですって。」と少し派手な口紅の女の子が微笑む。

「よく知ってるね。」と武田さんが顔をしかめ、

「なるほどー。もう、狙ってるんだ。
代表は2人とも独身だったはずだし、安住さんも独身だろうね。」と吉岡さん。

「そんなに素敵な人なら、どちらも決まった人がいてもおかしくないですね。」と結城さんが微笑み、
ピンクの口紅は口を尖らせ、販売の女の子の輪に戻って行った。

「ところで…藤野さん。
どちらの男性もあなたの様子を気にしていたように思うんだけど…」と結城さんが私の耳元で囁やく。

私が俯いて赤くなると、

「そういうことかあ。
あの2人がライバルになるなら、藤野さんを好きになっても無駄ってことだ。
さっきから、チラチラ見ている販売のヤツがいたんだけど…ねえ。」と武田さんが私に笑いかけた。
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