不機嫌なジェミニ
研修の時間が終わり、今日はおしまいだ。

デザイナーの人達と一緒に『D』の部屋に荷物を取りに行って、

お先に失礼します。と口々に挨拶をすると、
クンっとリュックが後ろに引っ張られる。

「トウコ、飯行こう。」とジンさんが私をみんなの前で私を誘う。

「え?ご飯ですか?」と聞くと、

「こっちかー」と結城さんがクスクス笑い、武田さんと、吉岡さんも顔を見合わせニヤニヤする。

「こっちってどっち?」とセイジさんが不機嫌な顔で立ち上がり、

「ジンさん、僕も一緒に行く。」と私のリュックを持つジンさんの腕を掴む。

「私も行く。」と蘭子さんもバッグを片付けながら手を挙げる。


み、みんなどうしたの?


「セイジは仕事があるだろ。」

「ジンさんだって残ってるでしょ。」

「うるせー。今必要なんだよ。行くぞトウコ。」

「俺も行きたい」と武田さんが手を挙げると、

「しょうがねえな。行きたいやつは一緒に来い。近所の小料理屋だぞ。」とジンさんが笑うと、

「はーい!」と私以外が手を挙げ、ぞろぞろと歩き出した。

私はジンさんに肩を強引に抱かれ、歩きづらいことこの上ない。

なんで?今ご飯?
こんな事をしてたら、みんなに私がジンさんのオンナだってバレちゃうじゃん…

と私だけが慌てているようで、

みんな普通に挨拶したり、今日の研修の感想を話し合ったりしている。




< 86 / 159 >

この作品をシェア

pagetop