不機嫌なジェミニ
今日は販売フロアの見学と午後からはデザイナーはアクエリアスのジュエリー工房の見学だ。
自分たちのデザインを形にしてくれる職人さんは大切なパートナーだ。

今はアクエリアスに所属する職人さんがジェミニのデザインを形にしてくれているけれど、
近いうちの専属の職人さんを雇える日も来るのかもしれない。
まあ、用意できる報酬も大切だけど、魅力的なデザインをするデザイナーの存在も
これからのジェミニに必要ということだと思う。

頑張らないと…。と思いながら集合場所になっていた『A』の会議室に荷物を置いてから足を運んだ。




「ジンさんって藤野さんと付き合っていたんですね。
それならそうと言えば良いのに…」
と私が昨日と同じ席に座った途端に販売の女の子が私に聞こえるように文句を言っている。

「えっと…付き合っているって…
私は思っていなかった…ていうか…」と彼女の顔を見ると、

「なにそれ？！」

「…」私が赤くなって下を向くと、


「藤野さんって…バカなの？」と呆れた声をだす。

「バカはないんじゃないかな？トウコちゃんってかなり天然だから…」
と後からやって来た結城さんが私の隣に座りながら言い返している。

「えー？それがあざとい嘘じゃないって事ですかあ？」
と販売の女の子が不機嫌な顔を見せるけど

「うーん。たぶん、トウコちゃんってそんなスキルはないって思うよ」と結城さんの言葉に

「…その子って、本当にお子様なんだ。
ジンさんって物好きだねえ」

「多分、要領の良い、したたかなオンナに飽きたんじゃない？」

「なるほどねえ…」

「モテる男の考えることはわからない」

とか…私の事は無視してヒソヒソと会話を2人で続け、意気投合している模様。


朝からなんでそんな話になってるの？

私は机に突っ伏し、『助けてー。』と心の中で言って目を閉じた。












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