不機嫌なジェミニ
コンビニでジュースを選んでいると、

「トウコちゃん」とセイジさんが私の隣に立った。

「今日はコンビニご飯ですか?」と私が明るい声を出したのに、

「目が赤い。『マッキンレー』でご飯食べてたら、トウコちゃんが泣きながら歩いているみたいに見えたから…
店舗の女の子に…ジンさんのことでなんか言われた?」と私の顔を覗く。

「なんか言われたぐらいで…
泣いたりしませんよ。
自分が…
…いいえ。大丈夫です。」と笑って見せると、


「…僕には涙も拭かせてくれないんだね。」
と少し、悲しそうな顔をして、炭酸のジュースを選んだ。

「本当に大丈夫です。
私自身の問題なので…」とミルクティーを選ぶと、

「僕なら、こんな風にひとりで泣かせたりしない。
ジンさんみたいにそうモテるわけじゃないし、
社長ってわけじゃないから、社外で会議や接待なんてないから側にいられるし…夜もひとりになんてしないよ。」

「やだなあ、セイジさんもモテモテですよ。販売の女の子たちも、素敵って言ってますよ。
…きっとセイジさんとお付き合いすることになっても、色々言われちゃうんだろうなあ…
…すぐに捨てられるとか、他にもたくさん付き合ってる女の人がいるとか…」つい、口を滑らせると、

「…そんな事言われたんだ…それってジンさんは知ってるの?」

「…それは問題ではないんです…
そんな事はわかっいて、お付き合いをしているんですから…」

と顔を背けて足早にレジに並ぶと、セイジさんも黙って後ろに並ぶ。

会計を済ませ、店の外で、セイジさんに腕を掴まれて立ち止まる。

「…すぐに捨てられるとか他にもオンナがいる。とか
そうトウコちゃんが思ってジンさんと付き合っているんだとしたら…
それは悲しい関係なんじゃないの?
トウコちゃんはそれでいいの?」

「セイジさんには関係ないっ!」と手を振り払って走り出す。

「トウコちゃんー、言いすぎた。ごめん!」と立ち止まったままのセイジさんの声が聞こえた。








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