タイムリープ
「どうして、京都で一人暮らしをまだ続けるんだよ!もうお母さんは亡くなったけど、お母さんがどれだけ僕たちのために仕事をがんばってくれていたのかも分かっただろう。なのに、どうして姉ちゃんは、京都でまだ一人暮らしを続けるんだよ?姉ちゃんも、奈良に引っ越して僕たちと一緒に暮らしたらいいじゃん!その方が、天国にいるお母さんもきっと喜ぶよ」

翼は床張りの廊下から、私のいる和室に足を踏み入れて早口で訊いた。

「それは………」

それを言われると、私は口を噤む。

京都に好きな優太がいるから、どうしても離れたくなかった。しかしそんなこと言えない私は、「勉強してせっかく受かった京都の大学を途中でやめたくないの」と、嘘をついた。

別に、大学なんてどこでもよかった。好きな優太と一緒にいられたら。
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