タイムリープ
「優太、LINE見てくれた?」

私は、不安げな声で訊ねた。

「え、LINE送ってたの?」

眉間にしわを寄せて、優太はズボンのポケットからスマートフォンを取り出した。

優太は手慣れた手つきでスマートフォンの液晶画面をタッチし、LINEのメッセージを確認した。

「うわ、ほんとうだ!ごめん。全然、気づかなかったよ」

LINEを確認した優太は、軽い口調で謝った。

未だに彼から、〝梢〟と呼ばれないのが不安だった。

「いいの。私も何度もLINE、送信してごめんね」

首を左右に振って私は、空いている優太の隣の席に座った。

優太はまた視線を落として、本の世界に戻っていた。

ーーーーーー夏休み明け、久しぶりに会ったんだよ。どうして、そんなに冷たいの?

不安の波がぐっと押し寄せ、私の胸が苦しくなる。

「ねぇ、優太。私に怒ってる?」

私は、優太に視線を移して不安げな声で訊いた。

「別に」

彼は、本のページを一枚めくって冷たく言った。

よほどその本に夢中なのか、私を見てくれもしない。

「詩織、大学来てないね」

私は、小さな声で訊いた。

「詩織は、午後からの講義」

本を読みながら冷たく言う、優太。

「そ、そうなんだ」

私の開いた薄い桜色の唇から、歯切れの悪い声が漏れた。

私と優太は午前の講義だけで終了し、詩織は午後からの講義だった。だから今日は、詩織と会うことはなかった。

結局私は優太と一日特に喋ることもなく、午前の講義を終えて家に帰った。
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