タイムリープ
「じゃあなんで詩織の前で、『優太のことは好きじゃないから、詩織のその恋、おうえんするね』って言ったんだよ!」

怒った口調で言った優太の瞳には、哀しい色が浮かんでいた。

「それは………」

それを聞かれると開いていた口がふさがり、私はなにも答えられなくなった。

神さまの言っていたどんな人生でも一度は起こる、〝不幸〟が私の頭によぎった。

「答えられないということは、やっぱり清水は俺のことが好きじゃなかったのかよ!」

優太は、悔しそうに下唇を噛みしめた。

「それは違うよ、優太。かんちがいしないで。私は、優太が好きだよ。それだけは、信じて!」

私は懇願するような声を口から出して、うるんだ瞳で優太をまっすぐ見つめた。

「うそつき」

そう言って優太は、イスから立ち上がった。

「ま、まって」

離れていく優太の手を、私はとっさに背後から握りしめた。

優太の温かい体温が、私の手に伝わる。
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