タイムリープ
「いいなぁ」

私の口から、本音が漏れた。

「梢、やっぱり後悔してるんでしょ」

詩織がスーッと目を細くして私を見た。

「うん」

後悔してないと言うと嘘になるので、私は正直に言った。

「大丈夫だよ、梢。今回は私たちと都合が合わなかっただけで、また飲みに行ける日が来るから」

優しい笑みを浮かべて、詩織は私をなぐさめる。

「うん」

詩織のなぐさめの言葉を聞いて、沈んでいた私の気持ちがぱっと明るくなった。

「でも、本当に犯人捕まってよかったよ。まだ死にたくないし、好きな人と一緒にいたいから」

「えっ!

好きな人のことを思い出した瞬間、詩織の顔がリンゴのように真っ赤になった。

「おはよう」

そのとき、山田優太が講義室に入って来た。

ーーーーーードクン!

「優太君………」

彼を見ると、私の鼓動が激しくなる。

詩織の好きな人は分からないが、彼が私の好きな人だ。


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