魔王
播磨尾と呼ばれる野良猫に出会ったのは最近だ。
この野良猫の姿自体は引っ越してきてから良く見ていたのだが、意思疎通できる知り合いになったのは最近だ。
猫は、長く生きると尻尾の先が割れて2つになる。
猫又だ。
「こいつあ、まだ赤ん坊だから、自分のことは何もわかってねぇが、魔王の孫なんだ。
 美代子が捨て猫と思ってコイツを拾ったのを、誘惑して誘拐したと勘違いしたらしい。
 魔王が」
「魔王って、猫の魔王か」
「あたりめぇだろ。
 魔王ってのはよ、たっくさん居るんだぜ」
「ならば、この子猫をお爺さんに返さなくちゃならない。
 どうせ、君の力で魔界へは行けるんだろ?
 食べたら、案内してくれ」
「…お前のその度胸と手っ取り早さは、あきれを通り越して尊敬するぜ」
政彦はサンドイッチの最後の一口を放り込むと、戸締りにそそくさと立った。
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