魔王
そのよん
数日後、政彦の夢枕に白い子猫が立った。
「嘘吐きめ。ここなら、あの猫又もやって来ないだろう」
美代子の検査入院のために病院に付き添っていたが、長時間待たされるうちに眠ってしまったらしい。
「うまく、僕を悪者にしたものだなあ、おい!
オトナは人間もずるいものだね」
「…僕は嘘は吐いていないさ。
猫好きにとって、子猫ってのは『カワイイ』という魔力を持っている」
「口の上手いヤツだ。
じゃあ、僕が赤ん坊扱いされるのはウンザリだってのは何だ?」
「そう思っていない子どもはいない。
それだけ口達者なら、なおさら」
「…呪ってやる、ってのは」
「オトナにとって、駄駄をこね始めた子供の泣き声・わめき声ってのは一種の呪いだね」
「……」
「とにかく、僕が苦手なのを知ってて猫を拾ってくるのだから、それだけでもうオカシイんだよ!
…見ていないところで野良猫に餌をやるならともかく。
それより、なぜ君が、人間界に居たのさ。
あるいは、美代子を魔界に呼んだのか?」
ニャッ、と一泣きして、子猫は窓から外へ飛び出した。
「猫!」という叫び声がどこかでした。
誰か霊感でも強いコ・メディカルスタッフか患者がいたのだろう。
白昼夢が解けた政彦は足元の文庫本を拾うと、本格的に長いすに横たわって居眠りを決め込んだ。
(おわり)
「嘘吐きめ。ここなら、あの猫又もやって来ないだろう」
美代子の検査入院のために病院に付き添っていたが、長時間待たされるうちに眠ってしまったらしい。
「うまく、僕を悪者にしたものだなあ、おい!
オトナは人間もずるいものだね」
「…僕は嘘は吐いていないさ。
猫好きにとって、子猫ってのは『カワイイ』という魔力を持っている」
「口の上手いヤツだ。
じゃあ、僕が赤ん坊扱いされるのはウンザリだってのは何だ?」
「そう思っていない子どもはいない。
それだけ口達者なら、なおさら」
「…呪ってやる、ってのは」
「オトナにとって、駄駄をこね始めた子供の泣き声・わめき声ってのは一種の呪いだね」
「……」
「とにかく、僕が苦手なのを知ってて猫を拾ってくるのだから、それだけでもうオカシイんだよ!
…見ていないところで野良猫に餌をやるならともかく。
それより、なぜ君が、人間界に居たのさ。
あるいは、美代子を魔界に呼んだのか?」
ニャッ、と一泣きして、子猫は窓から外へ飛び出した。
「猫!」という叫び声がどこかでした。
誰か霊感でも強いコ・メディカルスタッフか患者がいたのだろう。
白昼夢が解けた政彦は足元の文庫本を拾うと、本格的に長いすに横たわって居眠りを決め込んだ。
(おわり)