今宵浮かぶは陰陽の名

―――――――昼休み




ｻﾞｧｧｧｧ…


風が吹く校舎裏に藍の姿はあった。




カチャっと影千代が持たせた弁当を開き地面に置くと一際か細い声を出しながら一匹のネコが繁みの中から出てきておいしそうに弁当の中身を食べ始めた。



『…おいしいかい？』


ﾆｬｰﾝ



藍の言葉に嬉しそうに鳴くネコを見て優しく頭を撫でる。




しばらくすると食べ終えたネコは繁みの中に消え、静かな時間が流れ始めた。





『和か…。
ずっとこんな日が続けばいい……。』




そう独り言をつぶやく。






【主よ…。】



少し低い声が静かな場所に響き渡る。



『どうしたの、岑阮（ｼﾝｹﾞﾝ）。』



ピュッと風を吹かせ、出てきたのは先ほどのネコと同じくらいの大きさで、見た目はオオカミのような野獣。



【主よ、今日来た4人組には気を付けたほうが良いかもしれぬ。ただならぬ気であった。】



『ただの人ではないと言いたいの？』




【わからぬが…。
奴らがまた主を標的にして狙う可能性は否定できまい。
まぁ。そのような事態になったとて、この岑阮の敵ではないが。】



『……。ん、まぁ気を付ける。』




そう呟いて優しく岑阮の頭を撫でる。


【主…。】


岑阮はスッと目を閉じ、藍のすぐ横で丸くなって撫でられるその心地よさに浸っていた。