クールな部長とときめき社内恋愛
1.恋の終わりは突然に
結婚はいつかするものだろうけど、わたしがそれを意識するのは早いと思っていた。

わたし、友野舞花《とものまいか》は二十三歳の会社員。まだ年齢的にも自分のことだけで精一杯だと感じるし、自由に気楽に自分の時間を持ちたいと思うから、付き合っている彼氏がいても自発的には考えにくい。

今の彼氏が結婚相手に向いていないとか、そういうわけじゃない。もしプロポーズされたらそのときは彼の気持ちをうれしいと思うし、恋愛の延長に結婚はあると思っているから、彼と一緒になりたいって考える。

でも、彼はわたしにペースを合わせてくれる人だから、結婚を意識していないわたしにプロポーズなんて急にしないだろう。
だって相手は、十歳離れた男の人だから。


夜はまだ肌寒い、五月の金曜日の夜。今日は恋人と二週間ぶりに会う約束をしていた。

彼は忙しい立場の人だから、仕事終わりに食事に行くことは今までめったになかったけれど、彼のほうから誘われて何度かふたりで訪れたことのあるレストランで待ち合わせることになった。

早く会いたくて、会社が終わったあとすぐに飛び出してきたから、レストランに入る前にビルの化粧室でメイクを直す。
年上の男性と付き合うようになって、服装は落ち着いた色味のものになった。童顔だから、少しでも大人の女性らしく見せたい。
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