クールな部長とときめき社内恋愛
そう思って電話を切ろうとしたとき、画面の表示が《通話中》に変わった。

「も、もしもし」

『舞花……?』

電話に出た彼の声は、緊張しているように感じた。
ずっと避けていたのに、いきなり電話をして気まずさもあるけど、付箋を見ながらゆっくりと息を吐いた。

「電話やメールもらっていたのに、返さなくてごめんなさい」

『……うん。結構堪えた。でもそれだけ嫌な気持ちにさせたんだろうなと思ったし、俺が悪いから』

逸希さんの言葉に、喉の奥が締めつけられるような感じがして、苦しくなる。
辛い気持ちがすぐに湧いてきてしまうけど、ちゃんと話をするって決心をしたのだからと気を保つようにした。

「……今日、飲み会ですよね?」

『ああ……参加をしつこくお願いされたけど、仕事が終わらないからって少し顔を出すだけにした』

そうなんだ。じゃあ、今は会社の方へ向かっているのだろうか。わたしは、小さなバッグにお財布や必要なものを入れて玄関へと向かう。

避けていたわたしが、“会いたい”と今言うのは都合がよすぎると思ったので、自分から彼のもとへ行こうと思った。

『俺、どうしても舞花に伝えたいことがあるから、聞いてほしい』

そっと玄関のドアを閉めたわたしは一瞬緊張したけど、気持ちを落ち着かせる。
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