クールな部長とときめき社内恋愛
『確かに俺は、倉山常務のことがあったから舞花に近づいた。でも、舞花と一緒にいるうちに本気で舞花のことが好きになったんだ』

真剣な声が電話口から聞こえた。彼が適当なことを言っているとは思えなかった。

『最初は……倉山常務がどういう人物なのか、舞花から聞ければいいと思っていた。だけど、落ち込んでいる舞花のことが放っておけなくて、気になって……俺が笑顔にしてやりたいって思ったんだよ。その気持ちは、倉山常務のこととは関係ない』

逸希さんは、わたしのことを想ってくれていた。励ましてくれた彼の優しさは、本物だったのかな。

「わたしが、晃久さんと女性が一緒にいたのを見てショックを受けていたとき、あの場所にいたのは偶然ですか……?」

『あの日、俺は舞花のことを追いかけてきたんだ。デートに誘ったとき迷っている舞花に焦れて“元カレのこと、そんなに忘れられないのかよ”って、キツいことを言ったかなと思ったから。そうしたら倉山常務たちを見かけて、鉢合わせるのは折が悪いと思った。だから慌ててコンビニに入ったんだ』

「なら、晃久さんの婚約者の存在を確かめるためにあの場に居たわけじゃなかったんですね」

『ああ、コンビニの袋を持っていたから、偶然通りかかったように言うしかなかったんだ。それから俺は、倉山常務が婚約しているのを以前から知っていた。あのとき、ショックを受けている舞花に後ろめたい気持ちがあっただけど……放っておけなかった』
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