クールな部長とときめき社内恋愛
逸希さんはわたしを見つけたとき偶然を装ったけど、それに晃久さんのことは関係なくて、元々はわたしを追いかけてきてくれていたんだ。
彼は、わたしのことを想ってくれていた……。

「逸希さん……」

『俺は舞花が好きだ』

歩道を進みながら、わたしはスマートフォンを握る手に力を入れる。切ない想いで胸がいっぱいになった。
会って自分の気持ちを伝えたい。

「逸希さん、今から会ってくれませんか……? 実はさっき家から出て、外にいるんです。会社に向かえば会えますか?」

『え……? あ、いや、実は俺も、外にいるんだ。仕事が残っているっていうのは飲み会を抜ける口実で。自宅に帰る途中で舞花から電話があって……声を聞いていたら会いたくなったから、駅まで戻ろうとしていたんだけど』

彼も“会いたい”と言いづらかったのだろうか。
今までの自分に反省をしたわたしは、申し訳ない気持ちになったと同時に、逸希さんへの想いがあふれた。

「会いたいです、逸希さん……今から逸希さんの家に行ってもいい……?」

焦がれる気持ちで涙を我慢しながらそう尋ねたわたしに、逸希さんは『……うん、おいで。迎えに行く』と言ってくれた。


逸希さんの住んでいるマンションの最寄り駅に着くと、改札を通ってすぐ、わたしを探していた彼に抱きしめられた。

ここが駅だということを一瞬忘れていたのか、はっとした逸希さんは、「ごめん、行こう」と言ってわたしの手を握った。
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