クールな部長とときめき社内恋愛
休み明けの月曜、休憩時間に第二営業課の出入口までやってきた俺は、ちょうど仕事に区切りをつけてデスクを立った兄さんを見つけ、目が合ったので手招きをして呼んだ。

「珍しいな、俺を呼び出すなんて。そろそろ二課に戻りたいって相談か?」

「いや、違う」

休憩スペースまでやってきて、自販機でふたり分の飲み物を買ってひとつを兄さんに手渡す。
俺の考えていることを探るような視線に、今から俺が言うことに驚くんだろうなと笑いたいのを我慢した。

「今度の連休、温泉旅行をしよう」

「……なにを言いだすんだ、お前」

驚きというより、不愉快そうな顔だった。
眉を寄せている兄さんを気にせず、俺は話を続ける。

「舞花と俺、穂乃恵さんと兄さんの四人で行こうってことになってるから」

「なぜ俺がお前たちと旅行なんてしなければならないんだよ。面倒だ、断る」

「ダメ。穂乃恵さんがいるんだから、兄さんも一緒に行くんだ」

俺の言葉に、兄さんがさらに表情を険しくさせた。
意図がわからないわけではないだろうけど、はっきりと理由を突きつけてやったほうがいいかもしれない。

「兄さん、穂乃恵さんの気持ちに気づいてるんだろ? それなのに放っておいて、男としてどうなの?」

「俺は仕事の方が大事だ。恋人と離れたくないからって、いつまでもぬるい三課にとどまるお前のようにはなりたくない」
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