クールな部長とときめき社内恋愛
すると藤麻さんは頷いて、わたしの隣に腰を下ろす。おかしい、なんで帰らないの!?

「あ、あの、藤麻さんもなにか飲みますか? 水以外ならお茶とか……あっ、缶ビールありますよ! ちょっと前にヤケ酒をしたから余りが……」

立ち上がってキッチンへと向かい、そこまで言ってはっとしたわたしは口を閉じる。ヤケ酒なんて、余計なことを言ってしまった。

「じゃあ、ヤケ酒の残りの缶ビールちょうだい」

これって、長居する気なのかな。冷蔵庫から缶ビールを取り出したわたしは、藤麻さんの元へ持っていった。

「あのさ、聞きたいことがあるから聞いてもいい?」

「……ヤケ酒の理由ですか」

プシュッと、ビールの缶が開く隣でペットボトルの水をそのまま飲んでいたわたしは、そういう質問はやめてほしいと思いながら藤麻さんを見た。
だってこの人、若干意地悪なところがある。“振られてヤケ酒”なんて言って面白がられたら嫌だ。

そう思っていると、まだなにも言っていないのに藤麻さんは口もとを緩める。もしかして、察している?

「わ、わたしも! 藤麻さんに聞きたいことがあるので、それに答えてくれたらわたしも答えますよ」

「わかった、いいよ。なに?」

テーブルに缶を置いた藤麻さんは、こちらに体を向けて聞く姿勢を作る。
なぜか対抗心が沸いてきたわたしは、藤麻さんが困るような質問をしてみようと思った。先ほどからかわれたので、余裕を見せつけてくる彼を慌てさせたい。勝算のあるわたしは、少しだけワクワクしていた。
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