クールな部長とときめき社内恋愛
だけど、いたずらっぽく笑った彼がこちらを見てきたから焦ってしまった。
もしかして、女性のところに泊まっていたとか?と、面白がるように聞いてきた同僚に藤麻さんは、「どうだろうね?」と含みありげに答えている。

お願いだからハラハラさせないでほしい。藤麻さんが冗談めいた態度だったからか、それ以上話が広がらなくてほっとしていると、課長がわたしの元へやってきた。

「友野さん、午前中にほしい書類が結構溜まっていてさ、悪いけど頼むね! あと、会議の資料も」

「はい……」

次の日仕事だっていうのに、夜中まで飲むんじゃなかった……。床で寝たせいで体が痛いのは自己責任なので、気合いで頑張るしかない。そう思っていると、

「課長、友野さんの仕事、俺が少し手伝ってもいいですか? 彼女ひとりだと量が多いだろうし、三課に来たばかりだから取引先の情報を細かいところまで知っておきたいんです」

仕事を引き受けたわたしのところへ、藤麻さんがやってきて微笑んだ。彼の言葉に課長も、「そうか、じゃあ藤麻くんよろしく頼むよ」とあっさり了承していて、完全に信頼しきっている。

だけどわたしは、一体なんのつもりなのかと困惑しながら藤麻さんのことを見ていた。すると、目を細めた彼はわたしの耳もとでささやく。

「昨日、ふたりで盛り上がっちゃったから仕事きついだろ? だから手伝ってあげる。その代わり、俺の仕事も手伝って」

盛り上がっちゃったって、お酒飲んで話をしていただけなのに妙な言い方をしないでほしい! カアッと真っ赤になった耳を押さえながら、周りに聞こえていないか慌てて確認する。課長はデスクへ戻っているところだったし、誰もこちらを見ていないので大丈夫だったみたいだ。
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