クールな部長とときめき社内恋愛
椅子に座ったとき、コーヒーに入れるミルクをカウンターから持ってくるのを忘れたことに気づいて取りに戻ろうとしたら、膝に置いていたバッグを床に落としてしまった。

晃久さんの足元にリップクリームが転がって、気づいた彼がそれを拾ってくれたのだ。

『どうぞ』と渡してくれた彼に、わたしは真っ赤になりながらお礼を言ったことを今でも鮮明に覚えている。

素敵な人だなって思って、席へ座り直した後も晃久さんのことを気にしていた。

わたしの視線に気づいた彼と目が合ったときは、思考が追いつかないまま『あ、あのっ!』と、声だけを先に出していたような感じだった。

途中で口籠ったわたしを気遣うように、『誰かと待ち合わせをしているの?』と聞いてくれて、わたしの友達が来る時間まで会話をし、最後に連絡先を交換した。

まるでドラマみたいな出会いだと、当時のわたしは胸がいっぱいだった。
毎日少しずつ連絡をとるうちに、彼の年齢や職業を知ってわたしなんて相手にされないと思っていたけど、“こんなに素敵な人は今後現れないかもしれない”と、食事に誘ったりしてとにかくグイグイと押していた記憶がある。

そんな子供っぽいわたしのアピールを、晃久さんは大人の男性らしい余裕で受け止めてくれた。
連絡をとりはじめて半年、思い切って気持ちを伝えたら、『君の一生懸命なところに僕も惚れたよ』と言ってくれて、交際がスタートした。
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